058.演劇の魅力! 見る側編その3

演劇を見る時の魅力、役者、脚本と来て、ここで語るのは「演出」です。


演出、それはすなわち、どう見せるかの指示です。
演劇が面白くなるかそうでないかは、ここに依る部分が非常に大きいです。出来を左右する最大のポジションといっても過言ではないでしょう。


ただ、日常生活において演出の善し悪しに触れる機会はそう多くはないと思います。なので、簡単な具体例を考えてみましょう。


恋人同士が別れ話をしている。言い合いをしている内に、一人の人物が現れこう言った。「大変なことが起こった」


こんなシナリオ=脚本があるとして、これはどういう風に演技をするのがいいのか?それを考える人が演出家であったりします。


仮に上記のシチュエーションで男と女が激しく言い合い、そこに飛び込んできた人物がまくし立てるように「大変なことが起こった!」と言わせるように演出した場合と、
男女が淡々とお互いの悪い部分を言い合う中で、さも沈痛な面持ちの人間が静かに「大変なことが起こった…」と切り出すよう演出した場合と、
どちらも筋書きは同じなのに、観客が受ける印象は大きく違います。


この脚本をいかに料理するか?というある意味で「料理人」のような側面の仕事を受け持つことが演出家というわけです。


僕のおすすめの観劇方法の一つとして、「自分が演出家だったらこうする」ということを考えながら見る、というものがあります。

その台詞は激昂して言うよりも敢えて冷静に言った方が場が引き締まるんだ!などと思いながら観劇する、というわけです。そんな風な見方をしていると演出家の意図を汲んで舞台を俯瞰で見ることが出来るようになったりします。


また、その上で「自分が演出家だとして、こんな発想は無かったわ!」なんて見方も面白かったりします。自分に無い視点を認識することで、あらたな物の見方に出会うこともままあります。


これは舞台だけでなく映画やアニメ、コントやバラエティ番組など様々な「見せ物」に数多く存在するものです。


演出とはなんぞや?そんな意識をもって物事に当たるのも面白い人生なのではないでしょうか?

なんてまとめてみたり。


<文・和田宜之>