ライバルへ

君とはもうずいぶん連絡を取っていない。
どうしてるんだろう。
岐阜にいるんだろうか。
元気だろうか。


保育園から一緒だった僕らは違う高校に進学した。
そして、2人とも浪人生になった。
君と頻繁に会っていたのは、今思えばその時期が最後だった。
19歳の夏。
夏休みの図書館。
僕らの町はちょっとした高台に市の図書館があった。
そこで君と顔を付き合わせることがあった。
その度に、志望校と模試の結果を見せ合いよく分からないエールを交換しあった。
浪人生活にも秋が来て冬が来た。
センター試験の直前だった。
君の父親が病気で倒れた。
そして、君はセンター試験を受けなかった。
僕は悔しかった。
なんか自分のことのように悔しかった。
東京の私立大学の試験が始まった。
新幹線に乗って東京へ試験を受けに行った。
もう君が大学入試を受けられないことを知っていた。
あの夏、猛烈に勉強していたことも知っていた。
「来年受けるのか」って聞いたら、「俺はもういいんだ」って言った。
春。
大学進学が決まった僕は上京した。
彼とはメールのやりとりがあった。
東京での新生活をメールした。
彼は工場で働き始めたことを教えてくれた。
大学で友達ができ始めた。
おそらくその頃からだった。
メールの回数は減った。
気づいたら疎遠になっていた。
僕は君を思い出すこともなくなっていた。
26歳の夏。
小学校の同窓会があった。
会を開いた人間が言った。
去年、君の父親が奇怪な自殺を遂げたということを。
知らなかった。
言葉が出なかった。
君は同窓会に呼ばれなかった。
僕は東京に戻った。
今も東京にいる。
まだ憶えてる。
保育園のときのこと。
あやとりしながらジャングルジムに登りあったこと。
誕生日を憶えている。
君は6月3日に生まれた。そして、僕は6月4日に生まれた。
だから、忘れようがない。
先日、僕は28歳になったよ。
ってことは、君も28歳になったんだな。
君のことを思い出したよ。
だから、こんな文章を書いてる。
元気かい。
元気ならばそれでいい。
僕も頑張る。<文・フルタジュン>




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