ビールのバッコスたち

「ビールの季節がやってきた」と巷で言われている。
しゃらくせぇ。
僕はまだビアホールという場所に行ったことがない。
行きたいけど行けない。
ちゃんと会社勤めをしている人間じゃないと行ってはいけないと思っている節があるのだ。
数年前、僕の眼前に「ホッピー」という世界で一番美味しい飲み物が現れてしまったので、残念ながら「ビール、大好きや!」と胸を張って言える間柄ではなくなった。
しかし、ビールは美味いと思う。ホッピーの前にそれなりに飲むしね。


ビールと言えば、思い起こされるのは「相模時寿」である。

数年前までフルタ丸で一緒に演劇をやっていた男だ。
「彼の歩いた跡には麦が生える」と言われたほど、彼はよくビールを飲んでいた。
飲んで暴れて血を流す。
飲むだけじゃない。暴れるだけじゃない。そこには必ず血があった。
それを見事に体現していた。
血が流れてこその相模だった。
ジョッキを机にバーーンってやって、それがバリーンって割れて、その尖った部分を自分の首元に持っていった時の彼のセリフは伝説となっている。公表は避けるが。
何も起こらないで済ませようとするフランス映画は、相模を見習うべきだと思う。
というか、東映は早く彼を映画化すべきだ。
ほんとに何をやってんだ!
まーいろんなことがあり、すったもんだで今に至る。



そして、最近になって台頭して来たビール男が「水野裕」である。

フルタ丸の音響をやっている男だ。
彼と出会ったのは4年前ぐらいだったが、その時の彼はビールを飲むような人間じゃなかった。それが、オランダに行って帰って来たあたりから(留学とかじゃなく、1週間ぐらいの旅行に過ぎない)、ビールを飲むような人間になっていた気がする。オランダで何があったのかは知らない。たぶん、何もなかったと思う。しかし、彼の言動が派手さを帯びてきたのは確かだった。「次はブラジルへ行って、銃口を突き付けられようと思う」という意味不明の発言をしている。
彼の場合、相模のように飲んで暴れて血を流すことはない。
相模が「動」であれば、水野は「静」。
相模が「大仁田厚」であれば、水野は「瀬戸内寂聴」だ。
彼の「断らない」「流される」「無駄に前向き」という3要素は、
今、フルタ丸の精神をもっとも忠実に持っている人間と言われている。
というか、個人的に僕がそう思っている。


以上。ビールのバッコス紹介であった。<文・フルタジュン>


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