ヒマ


「人生なんて、ただの暇つぶしだよな」
「なんだ、いきなり」
「そう思わない?」
「そうかなぁ」
「そうなんだよ」
「どうした。何かあったのか?」
「何もなくてさ」
「は?」
「暇すぎるんだ」
「へぇ」
「何か暇をつぶすものがないとやってられなくて」
「何だ、そんなことか」
「そんなこととは何だ」
「あ、すまん」
「お前は暇なとき何してんの?」
「いや、俺は暇を感じたことがないな」
「えっ、マジ?」
「マジ」
「でも、何もやることがないときとかあるだろ?」
「ないな」
「マジで?」
「マジで」
「なんだよそれ。そんな訳あるか」
「そんなこと言われても」
「じゃあ、休みの日は何してるの?」
「え?…あんまり言いたくない」
「なんで?」
「言ったらお前、絶対に引くから」
「なんだそりゃ」
「だから言わない」
「そこまで言って、何も言わないのはナシだろ」
「えー…」
「絶対引かないから。下ネタでも何でもどんと来い!」
「ホントに?」
「ホントに」
「わかった。そこまで言うなら話す」
「おう」
「俺さ、黒魔術やってるじゃん?」
「ん?」
「だからさ、休みの日には儀式」
「ちょっと待て」
「なに?」
「お前、黒魔術やってんの?」
「うん」
「あ、そう」
「おかしい?」
「え?そんなことは」
「でさ、よくカラスの死骸とか鹿の生首とかを」
「待ってくれ」
「ん?」
「もう一回頼む」
「ああ。カラスの死骸とか」
「待て!」
「何だよ、言えとか待てとか」
「あのさ、その先は聞いて大丈夫なの?」
「別に、呪い返しとかはないよ」
「なに?」
「まじないがえし」
「何それ」
「知らねえの?」
「知らねえよ」
「何となくわかるだろ?」
「何となくわかりたくない」



「……。お前さ、引いてるだろ」
「…正直、引いてる」
「何だよまったく」
「引かないわけないだろ」



「……っていうあそびをしてる」
「は?」
「黒魔術をしてる俺の姿を妄想してる。暇なときは」
「……」
「お前もやってみれば?」
「…遠慮する」
「そっか」
「あー、良い天気だなぁ」
「…うん」