古田家之墓

もうすぐお盆だ。
けど、今年は色々とあって帰れそうにない。

やはり、気になるのはお墓。
長良川鉄道の線路沿いにある「古田家之墓」のこと。

僕は中学生時代からお墓によく参るようになった。
神社で小銭をチャリンチャリンと入れて、手をパンパンと叩くノリでお墓に出かけては
自分の願望を一しきり念じて「お願いします」と言ったものだった。

おそらく勘違いしていたのだ。
きっと先祖のお墓は己の願望をそらんじる場所じゃない。
でも、こうも思うのだ。


今、自分は、古田家の何代目かの長男である自分は、
実家を出て、おじいちゃんやおばあちゃんに早く帰って来なさい、
こっちの市役所で働きなさい、淳は長男なんやから、と言われてるのに、
僕は、そんな僕は、東京におります、と。
東京におって自分がやってること、フルタ丸だったり、ラジオだったり、
そんなことを報告する。
だから、自分はこっちへ帰って来られないのです。と。
そう言う。
もちろん心の中でね。
そうなると、なぜ帰って来られないのかを話す必要が出てくる。
だから、一つ一つ話すことになる。
もちろん、念じるのだ。
目標があるんです、と。
僕は律儀な性格なので、やっていることの目標を一つ一つ丁寧に説明していく。
これはこうで、あれはこうで、みたいに。
だから長いよ。
もうその時点で、何分、手を合わせて念じていることかと思う。
傍から見られれば、あの人は眠ってしまったのか、もしくはイタコみたいなことに挑戦しているのかと思われても仕方がない。
そしてね。
夢を語り、目標を言った限りは、できれば僕を応援してもらえないでしょうか、と。
当然そう言いたくなるというのが人間の心情というものだ。
それは礼儀でもあるような気がする。
そして、まだ続く。
いや、応援して頂けるのも大変ありがたいのですが、
ここは一発、精力的にがっつりと応援してみるのはどうでしょうか、と。
そんな応援もアリなんじゃないでしょうか、と。
がっつりな応援とノーマルな応援。
これは全然違う。
広末涼子はるな愛ぐらい違う。
すると、どうか。
ここまで来てしまうと、もはや『僕の夢を叶えてください』と限りなく同議になってくる。
だったら、すぱっと言ってしまおうじゃないか。
男らしく。


「がんばりますのでお願いします!夢を叶えたいのでよろしくお願いします!」


そう言って僕の墓参りは終わる。


9月ぐらいに、なんとか隙を見つけて帰りたいと思う。
その際は、あの長良川鉄道沿いに佇む古田家之墓に行く。
そして色々と報告するのだ。





<文・フルタジュン>


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