飛び散った牛乳パック

笑うことが嫌いな人なんているんでしょうか?
「決して笑うもんか!」と頑なに決めて生活している人っていますか?
もしもいたとしたら、その人はどこかの宗教団体に入っている人です。
できれば毎日笑って過ごしたいと思うのが人間の常。
キャッキャキャッキャと笑いの溢れる人生。
色で言えば、ピンク色とかレモン色。そうありたい。
けど、笑ってばかりもいられないのが人生だ。
笑えない状況なんていっぱいある。
浪人して臨んだ大学受験で失敗、肉親の死、北朝鮮から飛んでくるテポドン
色で言えば、ぐんじょう色とか、おうど色。
もしもそんな状況で大爆笑をかましている友人がいたとしたら、僕はそいつとの付き合い方を考えてしまう。
しかし、悲しい出来事や良く分からない日々が、
後々になって、結果「笑い」に転化もしくは帰着するというカードもある。
そのカードはそのまま創作の源になったりもする。


職業柄、「笑い」について考えることはよくある。
考えを迫られる時も、答えを出さなきゃいけない時もある。
そんな時、「笑い」について悩んだ時は、
自分の笑いの原点が何であるかを思い出すようにしている。
僕の笑いの原点、それは中学生時代だ。
たくさん書いてもアレなので、その中から一つだけ。
もう時効なので書こう。


中学3年生の頃、僕は「給食委員長」という役職に就いていた。
すなわち、学内の給食におけるトップだ。
給食センターから運ばれてくる給食を牛耳っていた。
プリンや牛乳など、僕はいくつでも自由に手に入れることができた。
今思えば、ちょっとしたマフィアだ。
その頃は欲望のままに、好きなだけプリンを食い、牛乳を飲み散らかしていた。
仲の良いWとHという悪友がいた。
僕は、だいたい30個くらいの牛乳パックを調達して、彼らに渡した。
彼らはそれを飲まず、サンタクロースのように担いで学校を出ていく。
僕らの町を走っていた路面電車があった。
その鉄道に何かしらの因縁を感じていた僕らは、停車中の電車に牛乳パックを投げつけるという遊びを始めてしまう。
その時の快感。
牛乳パックを電車に投げつけたことがある人にはもちろん分かってもらえるだろう。


そりゃあもう、気持ちイイのである。


牛乳パックは、鉄の車体で破裂するように飛び散った。
真っ赤なボディが真っ白に染まる。


自分たちでも意味はよく分からない。
意味は分からないけど、なんか面白く、僕も牛乳を調達する所からなんかもう面白くてしょうがなかった。


そんなことが中学時代にいっぱいあった。
「笑い」に迷った時は、そんな中学時代を思い出す。
しかし、思い出してはみるが、だいたい何の参考にもならないことが多い。



今、日本でイチバン面白い芸人。



<文・フルタジュン>


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