それは夏の思い出

私は、野球にあまり興味がない。
だから、知り合いが野球の話題で盛り上がったりしていても、うまく会話に参加できないのである。
野球にあまり興味がないから、好きなチームやら選手やらも特にない。
そりゃあイチローやら松坂やらといった大選手は尊敬したりもするが、
特に詳しくも興味もない私が彼らを褒めたり評価したりするのもなんだか違うような気がする。

ただ、プロ野球と聞くと、必ず思い出す場面がある。

あれは、私が高校2年生の時だった。もしかしたら、1年かも3年かもしれない。
つまりは高校生の時である。

私は当時とある部活の合宿に参加していた。
そこでは、夜、銭湯に行くのだ。学校には風呂が無いから。

ひとっ風呂浴び、ロビーで火照った体を冷ましているとき、
そこでは、野球中継がテレビから流れていたのである。
阪神対巨人だった、と思う。

阪神が、満塁のチャンスで、代打の八木を指名した。

私は、「こんな場面で打つのを任されるなんて、難儀な仕事だな」とか、
そんなくだらないことを考えていた。
ヒットが出ればすごい、とさえも思ってなかっただろう。
そんなに都合良く打てはしないだろう、と。そんな考えだった。

だが、神様とよばれるその人は、ホームランを打ったのである!
代打で、満塁ホームランを!



とんでもなくかっこよかった。本当に、あんなにかっこいい人を見たことはないというくらいに。
あのときの感動というか印象というかは、どうにも忘れることが出来ない。

私が野球のすごさを目の当たりにした瞬間は、それが初めてだったように思う。
きっとあれを生で、スタジアムで見ていたならば、今頃は私も阪神ファンという肩書きを名乗っていたのかもしれない。

今年も後数ヶ月で、日本のプロ野球の頂点が決まる。
けれど、プロ野球の醍醐味は「どこが優勝した」なんて側面だけで決まるものではないんだろう。

それを楽しめない私は、もしかしたら人生の楽しみのうちの何パーセントかを失っているもかもしれないな。