漫画 『星守る犬』

さっき、下北沢の定食屋で鳥の竜田揚げどんぶりを食らいながら漫画を1冊読んだ。


漫画『星守る犬』。

帯には重松清さんの推薦文がある。
その推薦文はこうだ。


「読み終えた瞬間、『おとうさん』という声が、
 遠くからかすかに聞こえた。
 涙が出た。
 せつなくて、うれしかった。
 重松清(作家)」


かなり信頼できそうな推薦文だ。あまり奇をてらっている感じもしない。
奇をてらっている類の推薦文は、本当に掃いて捨てるほどある。僕は結構嫌いだ。
ミュージシャンのアルバムだってそうだし、演劇のチラシだってそうだ。
奇をてらった結果、同じように気をてらった推薦文が並び、
それが逆に埋没している状況だってあるわけで。
「色んな派手な色が並ぶ中で白色が目立つ理論」である。
今、僕が勝手に作った理論だが、そんなことは往々にしてあるっしょ。
つたなさ、正直さが、ごく普通の会話のように「ポン」と綴られた推薦文にグッと来る。


星守る犬』に話を戻そう。

だから、予兆はあった。自分は泣くかもしれない。
そんな予兆が僕にあった。

気づいた頃には遅かった。
半袖短パンの28歳(ふとっちょ)は平日昼間の定食屋で、
どんぶり(60円出して大盛りにした)を食いながら漫画を読んで涙を流していた。
周りから僕はどんな風に見えていたのだろうか。
気持ち悪いやつだと思われていたのではないか。
それを裏付ける証拠に、店員のお姉さんは僕のテーブルにだけ水を注ぎに来てはくれなかった。
いつもは注いでくれるのに。っていうか周りのテーブルには注いでいるのに。
でも、僕はめげない。
ここで泣きやんでは僕の負けだ。
水がなんだよ。水なんていらねぇよ。
今、僕はカンドーして泣いているのだ。


犬を飼っている人で、いや、犬を飼ったことがある人で、
この漫画を読んで泣かない人はいない気がする。
犬がいる生活、犬の忠実さ、犬の可愛らしさ、犬といるヨロコビ、
全部が詰まっている。


「本屋でも立ち読みできる長さだが、
 自分の部屋で誰にも見られずに
 思いっきり泣いて下さい。
 フルタジュン(フルタ丸)」


僕はそんな推薦文を書きたい。


「絶対に映画化だけはしないで下さい!
 フルタジュン(フルタ丸)」


こんなのもアリだろうか。
とりあえず、僕も「推薦文を書いてください」という話が来るような人になりたい。で、その時は丁重に断ろう。嘘です。


がんばらねば。<文・フルタジュン>


★来週のキーワードは「夜の海」です。