童心

近所で大規模な工事が始まったのは、2ヶ月ほど前のことである。

元々そこは空き地というか原っぱというか、何も手入れされていない土地だった。遊閑地?とかいうやつだ。
それをごりごりと開発し誕生したのは、遊園地であった。
遊園地なんて、2ヶ月そこらで出来るものなのだろうか。疑問は多々あったが、「出来ました」と言われたら、そうなのだろう。ただの近隣に住んでいるだけの俺に、何の文句が言えよう。

開園に先立ち、近隣住民に、遊園地への招待チケットが配られた。当然、ウチの郵便受けにも入れられていた。俺は遊園地に行って楽しめるようなタイプの人間でもなければ、連れだって行く友人や恋人もいない。興味など無かった。が、たまたま3連休に入ってしまい、暇をもてあましていた俺にとって、そのチケットはある意味渡りに船だったのかもしれない。
俺は、大した期待を抱いたわけでもないのだが、物見遊山の気分で、そこへと行った。


その遊園地は、ありきたりとも言えるような乗り物が10種類ほど用意されていた。初見の人が、「2ヶ月で作られた」と言われて納得できるような、まあ要するに、大したことのないものだった。
期待をせずに向かったのだが、本当に期待する必要の無いような、はっきり言ってつまらない中身に、俺はむしろ驚いた。


子供の頃は、遊園地に行くと聞いただけで前日の夜はそわそわしっぱなしだったし、行ってからは体力配分なんかも気にせず走り回った。高いだけで粗末な食事しか出さないレストランの料理がとってもうまそうに見えたこと、部屋にあっても邪魔なだけの土産物を親にさんざんねだったこと。
まったく、しょぼいものを作りやがって。俺は軽く憤りを覚えた。


ふと周りを見ると、誰もが楽しそうな表情をしている。
そこには、一点の曇りもない。


そこで、俺は気付いたのである。


ここは、正真正銘、遊園地だ、と。
そして、ここで大事なのは器ではなく、それを満たす中身なのだ、と。