私は部屋で一人、パソコンに向かっている。


私は夜が好きである。静かな夜が。
しとしとと雨が降っている。夏の幕を引くような、秋の到来を告げるような、寒さをもたらす秋雨が、街を濡らしている。
こんな夜は皆が眠りに落ちる。人も、動物も、虫も。雨音以外に聞こえてくるのは、自分の呼吸くらいだろうか。

昔、煙草を覚えたばかりの頃、部屋でふかすのは何となく気が引けたので、ベランダに出て吸っていた。紫煙が夜と同化していく風景を眺めるのは、我が青春の1ページに加えるべき出来事であった。こう言ってしまうのは、いささか青臭いような気がしないでもないが。

静かな夜に、風を頬で感じつつ、煙草をふかす。風流じゃないか。そう思ったし、今でもそう思う。
そこにウイスキーなんかあった時には、まるで映画のワンシーンのようではないか。
さらにその時、闇夜を照らす満月が、ぽっかりと空に浮かんでいたならば、もう感動してしまう。夜空に咲いた一輪の華……とまあ、いささか歯の浮くような文ではあるが、そのような光景を文字に起こすこと自体が、多分に尊大なのかもしれない。


そんな良い気分のとき。
何も考えていないとき。
とっても疲れているとき。


私は別段、何も感じはしない。


ただ、そんな情景の中、ふと自分を客観的に見てしまう時がある。

きっと、寂しさというものは、そんな時にうまれてしまうものではないだろうか。

こんな景色を、良い気分を、素敵な夜を、誰かと共有したい。
けれども、そのような相手がいない。
そう思い当たった瞬間に、私は寂しさを感じてしまうのだ。

孤独と寂しさとは、似て非なるものだと思っている。
孤独はあくまで状態を表す言葉である。
寂しさは、感情である。
この二つは、同時に成立することもあれば、片方だけ成立する場合もある。

孤独な奴が寂しさを感じているとも限らないし、
寂しさを感じている奴が孤独であるとも限らない。

要は心の有り様というか、気持ち次第なのである。そう思っている。



しかしまあ、なんともさびしい文章ですこと。