恋はいつも初恋だって誰かが言ってた

毎週金曜日は小田急線に乗って藤沢に行っている。
もう5年間。
今まさに、そんな小田急線の中。藤沢に向かいながら、ケータイでコレを書いてる。


テーマが初恋。


5月、この年間の800文字テーマを和田と一緒に決めていた時に、彼がこのテーマを11月の第一週にしたいと言った。そん時は、なんでこだわったのか分からなかったが、読んで分かった。そんな和田からバトンが回ってきた。フルタの高校時代はどうだったのか。


これはもう、ちょこちょこと色んな所に書いてきたことだけど、高校三年生だった僕は名古屋の河合塾っていう所に通っていた。
そこで働く大学生の女性に恋していたわけだ。この話で一つ思い出したから書こうと思う。


僕がその女性とやりとりできた唯一の方法、それが勉強の悩みを相談することができる10センチ四方の紙(魔法の紙と読んでいた)だった。僕はそこに勉強の悩みを書かず、自分がどんな人間であるかを毎週のように紹介し続けた。


確か、9月だったと思う。
学校の文化祭が近づいていた。僕のクラスは映画を撮っていた。
その時、魔法の紙にはこう書いた。


『今度の文化祭、僕のクラスは映画を撮ります。僕は監督で主演もします。ビートたけしみたいです。がんばります!』


嘘だった。
今思えば、なんて安っぽい嘘を付いたんだろうかと悔やまれるが、残念ながら過去は書き替えられない。
当時はあまり目立たずに生きたいと思っていたので、僕は冴えない友人と共にカメラのスイッチを入れる係だった。そして、ガヤみたいなポジションで無理矢理出演させられた。そっちが現実。


監督でもなければ主演でもなかった。


結局、その女性に自分の気持ちを打ち明けることなく終わった。全ての大学に落ちた僕は浪人生となった。


本当にすべてが終わったと思った春だった。


恋はいつも初恋だって誰かが言ってたけど、僕の初恋はあれだったな。なぜなら、それまでの人生で女性を前にしてあんなにドキドキしたことはなかったから。


今、『I LOVE YOU』という演劇作品を創っている。

12月にフルタ丸で上演する。


叶わなかった恋ほど美しい。


和田、俺、こんなので良かったのか?<文・フルタジュン>


★次回のキーワードは「ニセモノ」です。