とある作家の話

「嘘と偽物。そこには明確な違いがあると思う。
私は創作活動をしてもう十数年になるが、最近、このテーゼに対して、様々なことを考えている。

小説、いや物語とは、ノンフィクションという枷をつけないのであれば、それはすべからく空想の出来事である。だからこそ、“創作”活動なんて言葉がしっくりくるのかもしれない。

つまるところ、私が生み出す物語は、真実から生じたモノなどではない、ということなのである。

だからといって、私が生み出したモノは、嘘ではない。
“口”に“虚”と書いて嘘。
つまり、嘘という言葉の中には「存在しない」というようなニュアンスが含まれている。
だが、私が手がけたものは、確実にこの世に存在している。それは嘘ではない。そう思うのである。まあ、真実というわけでもないのだが。

となると、私が作っているモノは一体何なのだろう、と思ったときに、ぴったりと当てはまる単語を見つけた。それが偽物である、というわけなのだ。

偽物という言葉には、嘘という言葉よりも“事実、存在している”というニュアンスが突き詰めていくと、多分に強く含まれていると考えている。

うむ、私の生み出したモノは、嘘なんかではないのだ。


偽物なのだ!


こう書いてみて、私は猛烈な違和感に襲われた。
その違和感とは、私が嬉々として作り上げ、実際に生きる糧にもなり、かつそれを生業としているものを、
私は大声で「偽物なのだ!」と言ってよいものなのだろうか、というものだ。

こんなジレンマを、数多の先人は経験してきたのではないのか、などと思う。
この論理の矛盾を抱えて、それでも私は胸を張って生きていかねばならない。
それはきっと、口に出したいほど多分に虚しいことであろう。」


こんなことを、とある作家が言っていた。



……なんてことはなかったぜ。



だからこれは、ニセモノのお話。



ところで、ニセモノでググったら、こんなものが出てきた。


うん、ニセモノって良くないな。良くない。