053.演劇の魅力! やる側編

さて、今回は主催側の演劇の魅力について述べてみます。
なぜ、演劇をやるのかという、とらえ方によっては多分に哲学的なテーマとも言えます。


──何故演劇をやるのか?
──何故ならば、そこに舞台があるからである。


とか言ってみたい気もします。嘘です。そんなこと思ったこともありません。ちゃんとした理由があります。


では、それを述べる前に演劇を主宰するデメリットについて言及しておきましょう。


演劇をやる上で苦しい面、それは“コストが途方もない”ところです。コストとは費やすもの。お金はもちろんですが、それ以外にも非常に多くのものをつぎ込みます。時間であったり、体力であったり、アイデアであったり…集約するとお金と時間になるわけですが、これが非常に厳しい。それでいて公演のチケット代で得られる収入には限界があります。ぶっちゃけ、黒字で毎公演を回すのは至難の業です。

また、演劇をすることによって人間関係に悪影響をきたすこともしばしばあります。もちろん同じ舞台に立つことでよく知らない人と仲良くなることはあります。というか、こちらの方が圧倒的に多いです。客演(ゲスト出演)の方であったり、スタッフさんであったり、観に来てくれるお客さんであったり。そういった人と仲良くなる機会はいくらでもあります。
ですが、演劇を完成させる課程では感性であったり人となりといった<偽らざるもの>が必ず必要となります。そこではそれ同士が対立することもしばしばあります。結果として、大げんかをしたなんて話はどの劇団も一つや二つでない数持っていると思います。


演劇をやっている人ってのは、お金や時間や人間関係を失ってでも、演劇をするのです。


端から見れば馬鹿な話です。実際、そういう非効率というか、非常に不毛な行為を嫌う人も多くいらっしゃると思います。

それでも、それらを補って余りある“演劇の魅力”があります。
それは何か?


ずばり、「演劇をやるのは面白い」。
それが全てです。


8年演劇に関わってきた僕ですが、断言します。
演劇は見るよりやる方が面白い。
始めてすぐに気づいたことですが、その感覚は今でも間違っていないと思います。


やる側のどこが楽しいのか、何をしているときに楽しいのかについては、書きません。やってみて実感しないとわからないものがここにあるのです。


今日も劇場では、観劇を楽しんだお客さん以上に楽しんでいる劇団員がいるわけです。
うらやましい。
そう思ってしまうから、次の公演を打つ。

演劇をやっている人は、大体そんなことを考えているはず。



<文・和田宜之>